「世界のホンダ」はどうするかーーー?
「ホンダ」は過去においても、殆ど他社と提携せずに絶えず独自路線を歩んできた。しかし「ホンダ」をを取り巻く日本の自動車業界は、昨年1年間で激変した。「トヨタ」は「ダイハツ」を完全子会社化し「スバル」と「マツダ」に加えて「スズキ」もグループ化している。また、日産は三菱自動車を傘下に収めた。これにより日本の乗用車メーカーは、「トヨタグループ」と「ルノー日産グループ」に二分され、「ホンダ」だけが孤立化していると言われる。
この日本の自動車業界再編の動きに対して、「ホンダ」が今後どう動き、どのような方向を目指していくのかが注目されるだろう。カギとなるのは八郷社長の「ホンダの今後の方向性、ホンダ2030年ビジョン」にある。
具体的に言うと、「2030年ビジョン」にある「変革のパートナーシップ」で、自らやるべきことを明確にし、そこに集中すると同時に、外部とのオープン・イノベーションに積極的に取り組むとしている。これは従来のホンダの自主自立政策から転換するものであり、他の自動車メーカーに限らず異業種(IT、AI[人工知能]等)との提携に意欲を示す。
すでに「ホンダ」は、研究開発子会社の本田技術研究所(埼玉県和光市)が昨年12月にグーグルを傘下に持つ自動運転開発の子会社ウェイモ社と自動運転の共同研究に向けた検討を開始した。今年1月には、GMと燃料電池システムを生産する合弁会社の設立を発表。3月に日立オートモーティブシステムズ社と電動車両用モーター事業の合弁会社設立契約を締結している。さらに2月末には本田技術研究所が新価値領域を担う研究開発組織「R&DセンターX」の新設も発表するなど、矢継ぎ早にオープン・イノベーションや協業の対策を講じている。
ホンダがこれまでの自主自立にこだわらずにオープン・イノベーションに踏み切ったのは、自動車業界大転換の潮流に乗らないと生き残れないと判断したからであろう。
「ホンダ」は2008年のリーマンショックでF1から撤退した時、経営悪化の話が流れたが、もう一つの撤退要因は技術開発の魅力が失われたことにあるようだ。その後、2015年に7年ぶりにF1復帰するが、なかなか勝てない状況が続いていた。そんな中、佐藤選手が8年目の挑戦で「インディ500」に優勝したことは「ホンダ」にとって望外の喜びだったのだ。それが八郷社長の言葉に端的に現れている。
この会見に先立つ6月8日に、八郷社長は社長就任した2014年6月からを振り返り、「2年間の取り組み成果と今後の方向性」を披瀝している。その中でホンダ「2030年ビジョンステートメント」を明らかにするとともに、2030年までに四輪車のグローバル販売台数の3分の2を電動化することと、2025年頃をめどに、SAE(米国自動車技術者協会)が定める「レベル4」の高度な自動運転の実現を目指す方針を宣言した。

こんな記事がありました!
●ホンダが買収のターゲットに?
トヨタは日産と異なり、グループ内にアイシン精機、曙ブレーキ工業、デンソーなど技術力の高い部品メーカーを多数抱えている。デンソーのようにトヨタグループとしては独立性の高い企業もあるが、それでも日産と比較するとトヨタは垂直統合モデルとしての色彩が非常に濃い。
この厚い技術基盤がトヨタの競争力の源泉であったことは間違いないが、今後、EVという「軽い」技術が普及した場合、これがトヨタの足かせになる可能性が十分にある。逆にいえば、日産としては、産業構造が転換するかもしれない今のタイミングこそが、トヨタに追い付く最後のチャンスともいえる。
このような視点で自動車業界を眺めて見ると、再編劇の主役となりそうなのがホンダである。日産はゴーン氏の決断により、良くも悪くも勝負に出ている。一方、スズキのような弱小メーカーは大手との提携で生き残りを図るしか道はなく、選択肢は限られている。
スズキがトヨタと提携したのは自然な流れであり、両者はいずれ資本関係を持ち、最終的にスズキはトヨタグループの一員となるだろう。一方、どの場所にも属していないのがホンダであり、ホンダは今後、資本提携のターゲットになる可能性が十分にある。
もっとも、ホンダに秋波を送るのは完成車メーカーとは限らない。グローバルに見た場合、独ボッシュなど大手部品メーカーが完成車市場に乗り出してくる可能性や、インテルのようなIT企業の動きも見逃せない。インテルは今年3月、高度な自動運転技術を持つイスラエルのモービルアイ社買収を発表するなど自動運転時代に向けて着々と布石を打っている。
(参考資料:「livedoor'News:自動車のEV化で業界激変 ホンダが買収のターゲットになる 2017.3.27」)
こんな記事もありました!(「電読:2018.10.6版)
ホンダと米ゼネラル・モーターズ(GM)は3日、自動運転技術で提携すると発表した。ホンダは同日、自動運転分野のGM子会社に7億5千万ドル(約850億円)を出資した。
事業資金の提供も含め合計3000億円規模を投じて次世代技術を共同開発する。自動運転ではIT(情報技術)大手などを含めて業種を超えた開発競争が激しくなっている。規模を追求してきた自動車業界の再編はデータの収集や活用を軸とする新たな段階に入った。
Source: 日経新聞