8月16日(月)「お盆休暇」も大体終わりましたが「新型コロナウイルス」は、変異した「デルタ株」の出現で、日本でも急激な(欧州並み?)感染者数の増加です。
全国で1万7833人感染 重症者数は3日連続で最多
国内の新型コロナウイルスの感染者数は15日午後9時現在、新たに1万7,833人/一日が確認された。死者は10人増えた。厚生労働省によると、14日時点の重症者数は1,563人となり、3日連続で最多を更新した。(朝日デジタル、news.yahoo.co.jp )
日本人・アジア人は「新型コロナウイルス」に強い?
「ファクターX」の正体
'21.07.21 Medical Note, news.yahoo.co.jp
◉ なぜ日本の感染者数や死者数が少ないのか?
日本におけるCOVID-19の感染者数と死者数は、世界の中でも低い水準を示しています。たとえば、人口100万人あたりの感染者数と死者数をG7参加国*(アメリカ、フランス、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、日本)の中で比較すると、日本は感染者数・死者数共にもっとも低く、その差は歴然です。 なぜこのような差が出ているのでしょうか。この疑問に対して、ある研究者は「日本人の多くは新型コロナウイルスに感染し、すでに集団免疫が成立している」という仮説を立てました。しかしそのようなエビデンスはなく、免疫学の観点で考えるとこの理論には無理があります。 また、新型コロナウイルスに関わるPCR検査の陽性率(陽性者数÷PCR検査実施数)を見ても、5%ほどとその割合はとても低いのです(2021年7月時点)。これらの点を踏まえると、やはり私たちの多くは新型コロナウイルスにさらされていない可能性が高いのです。 *G7参加国で比較するのは、経済や医療のレベルが近い国であるため。
◉ ファクターXに関する仮説と考察
(上写真・図表の提供は、日本テレビ Google;ntv.co.jp )
ただこれだけ明らかな差が出ているなかで、やはり私は日本人あるいはアジア人における「ファクターX」すなわちCOVID-19の重症化を抑制する要因が何かしら存在する可能性を考えています。というのも、COVID-19による死亡者数を国ごとに見ていくと、ヨーロッパの国々やアメリカ、南アフリカでは100万人あたり1000人を超える死者数であるのに対し、アジアの国々(日本、韓国、中国)は100万人あたり150人以下と非常に少ないのです(2021年6月30日時点)。
(上の表は、manseki.com )
ファクターX、その1つの可能性は「交差免疫」です。すなわち、新型コロナウイルスではないけれど何かそれに近いウイルスにかかった経験があり、それによりCOVID-19があまり重症化せずに済んでいるという可能性です。あるいは先のページでお話ししたように、何か新型コロナウイルスに似たものが私たちの自然免疫(生まれつき自然に備わっている免疫機構)を訓練してくれて、感染しにくい・重症化しにくい状況をつくり出している可能性があります。ただ、現時点ではそれが何かを明確にはいえないため、あくまで推測の域は超えられていません。
◉ 風邪ウイルスの抗体との関連性
未曾有の感染症との闘いのなかで、ファクターXに関する種々の仮説が立てられました。たとえば初期の頃にいわれていたのが、風邪を引き起こす4種類のヒトコロナウイルス*(ヒトに日常的に感染するコロナウイルス)に対する抗体を日本人の半分以上が持っており、それが交差免疫をもたらしているという考え方です。 ヒトコロナウイルス*に関してはさまざまな研究が行われています。その中には、成人を対象にした研究でヒトコロナウイルスに対する抗体の有無がCOVID-19の死亡率の低さに関係していることを示すデータがあります。しかし一方で、子どもを対象にした研究では、ヒトコロナウイルスの抗体と重症化にはあまり関連性がないというデータが示されました。現時点ではどちらが正しいのか結論は出ていません。 *ヒトコロナウイルス:HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1の4種類。風邪の10~15%(流行期35%)はこれら4種のヒトコロナウイルスが原因といわれる。(右は「ファクターX として挙げられる主な説」Google;chunichi.jp)
◉ 生活習慣や血液型・HLA型の違いは?
そのほかにも、生活習慣や血液型、HLA*型(白血球の型)の違いがファクターXではないかという説もありました。確かに、キスやハグをあまりしない、家の中に土足で上がらないなどの生活習慣の違いはおそらく重要なポイントでしょう。しかし、アジアの国々で一様に同じ生活習慣ではないことから、ファクターXと断言できるものではありません。また、血液型やHLA型については特定のタイプと重症化との関連がいくつか示唆されていますが、妥当性のあるデータは見つかっていません。 *HLA:細胞表面にある分子。自然免疫に関わり、非常に多型性が高い(個人差が大きい)。(右横グラフは「世界で日本だけ死亡者数が少ない?」Google; president.jp )
「ファクターXは幻想だ」岩田健太郎医師が説く
“withコロナなどありえない理由”
2021年1月号「文藝春秋」Google;bunshun.jp
世間で「第三波」と呼ばれる現在の新型コロナウイルス感染拡大を、神戸大学教授で感染症内科が専門の岩田健太郎医師は「第二波が収束しきれないまま広がってしまった状況」と説明する。 なぜ第二波が収束しきれなかったのか――。その理由を岩田医師は「ムード」という言葉で表現する。(右写真は、岩田健太郎教授曰く「五輪のコロナ対策は言語道断!」AERA、 news.yahoo.co.jp )
岩田健太郎医師(1971年生50才)の経歴 1997年島根医科大学(現・島根大学)卒業。沖縄県立中部病院研修医、コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院内科研修医を経て、アルバートアインシュタイン大学ベスイスラエル・メディカルセンター感染症フェローとなる。2003年に中国へ渡り北京インターナショナルSOSクリニックで勤務。2004年に帰国、亀田総合病院(千葉県)で感染症科部長、同総合診療・感染症科部長歴任。2008年より現職。
「政府がぶち上げたGo To キャンペーンや、繰り返し発信される『経済を回すことの重要性』を説くメッセージに、日本全体のムードが感染対策を緩める方向に傾いてしまった」(右写真は「コロナ感染症の中で働く激しい恐怖」Google;toyokeizai.net )
そもそも日本人は、「ロジック」や「データ」を重視するよりも、「ムード」や「空気」に流されやすい国民性だ。政府が何の科学的裏付けも持たずに発信する経済対策に、「もう大丈夫なのだろう」と思い込もうとした。そして政府は、そんな国民の「安心したい」という思いを利用して経済回復に舵を切った。結果として得をしたのは、感染拡大を目論むウイルスだけだったのだ。
政府は「感染拡大防止と経済の両立」を「withコロナ」などという表現を多用してアピールするが、岩田医師は感染学の視点から、「それは幻想に過ぎない」と斬り捨てる。
いわゆる“コロナ禍”で大打撃を受けている産業の多くは、観光、イベント、外食など「人の移動」によって成り立つ業種だ。これらの業種を感染が続くなかで動かしたところで、たとえ政府が何らかの施策を講じたとしても元の水準に戻すことは不可能。まずウイルスを徹底的に制圧してから経済を動かす、という手順を踏まない限り、いつまで経っても「外出自粛」と「自粛緩和」を繰り返すだけ。長い目で見れば、経済を弱めていくだけ――と分析するのだ。
「ファクターX」が生んだ“幻想”
そんな政府にとって便利な言葉が湧いて出た。「ファクターX」だ。 日本人は欧米人に比べて感染しにくく、たとえ感染しても重症化しにくい。その背景には何らかの要因、「ファクターX」が存在する――という説だ。ご存じの通り、京都大学の山中伸弥教授が立てた仮説だが、これは「withコロナ」を標榜して経済対策に力を入れたい政府にとっては大きな援軍となった。(右写真は「血流などを良くするため、新型コロナウイルス感染症患者の姿勢を変える医師ら」=東京都文京区の東京医科歯科大病院、同病院提供、一部画像処理しています。JIJI,com)
もちろん、山中教授は政府をアシストするためにこの仮説を立てた訳でない。科学者として、未知の現象を解明する足掛かりとして打ち出したものなのだが、政府にとっては便利に働いた。そして国民も、この仮説に必要以上の「安心」を求めてしまった。まだ何の科学的裏付けもない仮説に寄りかかり、「日本人だから安心だ」という幻想に浸ってしまったのだ。
しかし、残念ながら現状では、ファクターXを強力に立証する報告はない。細かな、マイナーな報告はなくはないが、それをもって日本人が安全に観光旅行を楽しめる理由付けには到底ならない。
“安心”ではなく“安全”に目を向けるべき
「日本では“安全”と“安心”という二つの言葉をセットにして使うことが多いが、外国では“安全”は使っても“安心”はあまり使わない。“安全”が根拠に基づくものであるのに対して、“安心”は気分的な問題。外国人は根拠やデータを重視するが、日本人は気分の良さという要素を求めるため、“安心”が付随してくるのです」
情緒を貴ぶ日本人の国民性が裏目に出てしまった。少なくともウイルスに情緒は通じない。理論的、合理的に対応していくべきなのだ。
少なくとも、いまはまだ安心を求める局面でないことは確かだ。ファクターXは、まさに“安心”を醸成するワード。そこに漂う心地よさではなく、いまこそ日本人も、“安全”に目を向けるべきなのだ。(以上 「文藝春秋1月号」長田 昭二)
思い出しましたこの医師「岩田健太郎」!
コロナクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の担当感染医師だったが、組織の感染対策を批判し組織の権力?で初日にクルーズ船から追い出され、動画を投稿した熱血医師でした。
動画で岩田教授は「グリーンもレッドもグチャグチャになっていて、どこが危なくてどこが危なくないのか全く区別かつかない」「聞いたら、そもそも常駐してるプロの感染対策の専門家が一人もいない」となどと指摘、「やってるのは厚労省の官僚たちで、私も厚労省のトップの人に相談しました、話しましたけど、ものすごく嫌な顔されて聞く耳持つ気ないと」「専門家が責任を取って、リーダーシップを取って、ちゃんと感染対策についてのルールを決めて、やってるんだろうと思ったんですけど、まったくそんなことはないわけです」と厳しく批判している。
これに対し、現地で対応にあたっている橋本岳厚労副大臣は「私の預かり知らぬところで、ある医師が検疫中の船内に立ち入られるという事案がありました。」「お見掛けした際に私からご挨拶をし、ご用向きを伺ったものの明確なご返事がなく、よって丁寧に船舶からご退去をいただきました」と、暗に岩田教授を批判、厚生労働省幹部も「感染症の専門家がいないはずがないし、きちんとエリアの区分けもされている」と反論した。(Google;times.abema.tv)